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神経科学

神経科学で学ぶこと

脳は、心臓の鼓動や呼吸、食欲といった生命の維持に必要な自律機能を司る司令塔です。さらに脳は、認知、記憶、思考、言語、感情、意志など、人間に高度に発達した「精神活動(高次脳機能)」のすべてを司っています。そして神経は、五感を通じて外界からの刺激を脳に伝え、脳が出した指令を体中へ張り巡らされたルートで伝える重要なネットワークです。「神経科学」とは、この神秘に満ちた脳と神経系の仕組みを、分子レベルから個体行動のレベルにいたるまで総合的に研究する学問です。

神経科学のアプローチは非常に多角的な分野(学際的領域)に分かれています。

神経解剖学: 脳や神経の細胞、組織、複雑な神経回路の構造を視覚的に解き明かします。受精卵から神経がどのように発生・分化し、病気や怪我で損なわれた神経がどう再生するかを追究します。

神経生理学・神経生化学: 脳や神経に刺激が加わった際、どのような電気信号が走り、どのような神経伝達物質(ドーパミンやセロトニンなど)が放出されて情報が伝わっていくのかを、生理現象や分子・タンパク質レベルの化学反応から検証します。

計算論的神経科学: 脳の膨大な情報処理の仕組みを、数学的な数理モデルや「AI(人工知能)」を用いてシミュレーションし、脳の動作原理を解明しようとする現代の最先端領域です。

研究のテーマとしては、脳の発達障害やアルツハイマー病などの「認知症」、脳梗塞などの脳血管障害、脳腫瘍、脊髄損傷といった脳神経疾患のメカニズム解明と治療薬の開発が挙げられます。かつて脳の神経細胞は一度損なわれると二度と再生しないと考えられていましたが、近年の再生医療(幹細胞研究など)の進展により、神経再生の治療法に大きな光明が見えてきました。また、脳のどの部位がどのような機能(視覚、言語、感情など)を司っているのかを調べる研究や、渡り鳥の航海行動など動物の脳と行動の因果関係を紐解く研究も活発です。

近年の研究手法は飛躍的な進化を遂げています。顕微鏡による細胞観察や培養実験だけでなく、生きたままの脳の活動をリアルタイムで可視化する「fMRI(機能的磁気共鳴画像法)」などの脳計測技術や、光を使って特定の神経細胞の活性化をコントロールする「光遺伝学(オプトジェネティクス)」といった革新的なアプローチが導入されています。

さらに、神経科学は医学や理学の枠を超え、認知心理学や教育学といった文科系分野との共同研究へも広がっています。また、人間の脳の仕組みをモデルにした「ニューラルネットワーク」は現在のAIの基盤となっており、現在は逆に、脳の信号を読み取って義手や車椅子を思考だけで動かす「BMI(ブレイン・マシン・インターフェイス)」の開発など、情報工学と脳科学が完全に融合した最先端研究へと発展しています。神経科学は、人類最後のフロンティアである「心と知能の謎」に迫る、無限の可能性を秘めた学問です。

学部・学科選びのヒント

神経科学系の学問は、主に医学部で学びますが、動物を用いての研究は動物行動学系の学科やコース、神経回路については情報科学・工学系の学科やコースで学べる大学もあります。

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