3つの使命

国際基督教大学は、基督教の精神に基づき、自由にして敬虔なる学風を樹立し、国際的社会人としての教養をもって、神と人とに奉仕する有為の人材を養成し、恒久平和の確立に資することを目的としています。 本学は、国際的協力により設置された大学として、その名に示される通り、国際性への使命(I)、 キリスト教への使命(C)および学問への使命(U)の3つを掲げ、目的の実現に努めています。


学問への使命

ICUは、真理を探究し、学問的自由を守り、その内実を豊かにすることを使命として創立されました。真理を求め、伝達する上で最大の成果を得るためには、最高の学問的水準と学問の自由を維持することが必要です。知の共同体であるICUには、それを守る責任と期待と励ましが与えられています。

知識の交流は、あらゆる高等教育研究機関が特別な関心をもって取り組むべき重要な課題です。ICUの使命は、断片的なままでは役に立たない知識を互いに関連づけ、統合し、そのなかで、自らの専門分野を超えて広く知識の交流をなし得る大学人を養成することにあります。ICUが 教養学部(liberal arts college)の制度をとり、精神の解放と涵養とを重視するリベラルアーツ教育に力をそそぐ根拠は、まさにこの点にあります。

自由で、独立した思索力と批判能力を身につけ、非理性的な力の支配に抗い、真理と自由のもとに理性的な決断を行ない、この決断にともなう責任を引き受けること。学問的精神の支えを受けて、このような責任意識を体得した人々を世に送り出すことこそ、ICUの使命です。


キリスト教への使命

ICUは、キリスト教精神によって立つ学園であり、その使命は、宗教も含めて、人間存在のあらゆる次元の問題を探求し、考究を深めることにあります。

人間の直面するさまざまな問題の説明や解釈、解決の方法において、キリスト教精神に従う場合とそうでない場合との間には、異なる面があるかもしれま せん。しかし、私たちが用いる学問的方法や論理は、他の立場に立つ場合と全く変わりません。学問を通じて得られる知識は、それ自体が最終目的ではなく、たとえば社会改善の責任というように、さらに深い意義をともなうものです。この意味において、知識、信仰、行為は、本質的に一体であるべきです。

高等教育の場であるICUは、キリスト教信徒をつくることを目的とはしていません。しかし、学生一人ひとりは、学園生活を通じて個々の人生や社会生活の中における神の存在とその力に目を開くよう呼びかけられています。この呼びかけは、学生が自ら真理を求め、それぞれが見出した真理に身を捧げることを願う、大学から学生への挑戦です。


国際性への使命

第二次世界大戦後に誕生したICUは、既にその創立の根本理念が、国家の枠にとらわれない立場をめざす大学でした。さまざまな国籍や文化的背景をもつ人々がともに学び、働く、共同生活の場であるICUでは、教職員、学生のすべてが、可能な限り国際性を実現しようとしています。このなかで、多彩な教育観がカリキュラムに反映され、構成員の各人が、文化的差異を超え、独立した人間としての人格的出会いを経験します。共同生活に生じる多くの緊張を体験し、適応していくなかで、学生は新しい世界における生き方を創造し、世界の問題を自己の問題としてとらえることになります。

国際的相互理解や交流を実現する為に欠くことのできないものは語学力であり、ICUでは日英両語により教育を行なっています。また、海外諸大学との交換留学制度をはじめ、世界との多様な交流の場を実現しています。

ICUは、日本にあって、世界と日本を結ぶ架け橋としての使命を自覚し、国際理解と文化交流の進展に貢献することをめざします。

ICUとキリスト教

ICUは大学の使命にあるとおり、キリスト教精神に基づく大学です。宗務部、教授会の宗務委員会、学生グループなどによって、さまざまな宗教活動が行われています。


大学礼拝

大学牧師、教員や学生のほか学外からも説教者を招き、毎週水曜日昼休みに行われる礼拝です。


キリスト教週間

毎年5月、全学の宗教への関心を深める機会としてキリスト教週間が開かれます。この一週間は授業時間が短縮され、学生委員会が中心となって企画する、講演やフォーラム、コンサート、オープンハウスなどが行われ、クリスチャンでない学生も大勢参加しています。


ワークキャンプ

国内外各地でボランティア活動を行います。

そのほか、修養会、学生団体による聖書研究会、読書会などさまざまな活動が実施されています。 これらの行事はいずれも参加は自由です。また一連の宗教活動はICU教会と密接な関係を持って行われています。


ICUのキリスト教理念

本学の「キリスト者条項」について説明しています。

ICUのキリスト教理念(デジタルブック)


国際基督教大学教会

国際基督教大学教会(ICU教会)は組織的には独立した大学とは別個の教会です。エキュメニカル*なこの教会は、神を求め神に仕えるものが、あらゆる立場のキリスト者によるフェローシップを作ること、大学の宗教生活および教育の完成を助けること、キリストの精神を通してすべての人々に、福音の宣教と奉仕の誠を尽くすことを目的としています。地域社会にも開かれており、毎週日曜礼拝が日英両語で行われています。
*キリスト教諸教派・諸伝統を尊重しつつ、世界教会的一致と協力を推進する運動

ICU教会Webサイト


世界人権宣言と学生宣誓

ICUでは人間の個としての発達、および社会における個人の権利という問題が献学以来重視されてきました。1953年4月29日、最初の入学式に出席した新入生は一人ひとりが紹介され、それぞれが大学の原則を支持し、国際連合が採択した「世界人権宣言」(1948年12月10日国連総会決議により採択)の原則にたち、大学生活を送る旨を記した誓約書に署名しました。この時以降、学生宣誓は毎年の入学式における慣例となっています。

私は国際基督教大学の学生として
大学の目的と理想との実現のために
世界人権宣言の原則にたち法を尊び
学則ならびに指示に従うことを
入学にさいし ここに厳粛に宣誓します

世界人権宣言

沿革

1949年6月15日、静岡県御殿場のYMCA東山荘で開催された大学組織協議会に集まった日本と北米のキリスト教界の指導者たちによって、「国際基督教大学」は正式に創立されました。この日、理事会および評議員会が公式に組織され、大学設立の基本方針が採択され、教育計画の原則が決定されました。日本の地に超教派のキリスト教大学を設立しようという日米のキリスト者の約半世紀にわたる願いがかない、その努力が実を結んだときでした。

御殿場会議実現の裏には、日米の関係者の精力的な計画立案の作業がありました。すなわち、1945年秋、第二次世界大戦敗戦から数週間の後、教育に携わる日本のキリスト者の間で、キリスト教精神に基づく総合大学の設立計画が開始されました。この活動は、来日した米国キリスト教会使節団、米国教育使節団を通して、米国に伝えられます。これに呼応し、大戦後の国家間の和解と人類愛を求める人々の力強い意思と願いは、日米協力によるキリスト教大学建設事業に対する支援として具体化されて全米に反響を呼ぶことになったのです。1948年には、ニューヨークに 日本国際基督教大学財団 (JICUF: Japan International Christian University Foundation, Inc.)が設立され、その後の募金活動の中心を担うこととなります。

日本では、一万田尚登日本銀行総裁を後援会長として全国に募金活動が展開され、企業や団体、キリスト者・非キリスト者を問わず数多くの人々から寄付が寄せられました。敗戦の復興が緒についたばかりの時期にあって、大学の礎が多数の人々の国際的な善意によって築かれたという例は、ICUをおいて他にはありません。

1950年には、日本で集められた寄付により、東京の三鷹市に広大な土地が校地として購入されました。1952年4月、献学式が行われ、まず語学研修所が開設され、1年後の1953年3月、文部省より学校法人国際基督教大学の設置認可を得て、同年4月1日、日本で最初の4年制教養学部大学として発足するに至りました。1999年には創立50周年を迎え、2004年3月までの5年間にわたって、その記念事業を展開しました。また、2003年度には「『平和・安全・共生』研究教育の形成と展開」により21世紀COEプログラムに、「責任ある地球市民を育むリベラル・アーツ」により「特色ある大学教育支援プログラム」(特色GP)に採択されました。

2008年度には教学改革を実施し、これまで6学科に分かれて入学していた制度を変更。学生は入学時には専攻を決めず、入学後さまざまな分野の学問に触れ た後、2年次の終わりに31メジャー(専修分野)の中から自身の専門を選択するシステムに移行しました。これに合わせて申請した「自発的学修者を育むリベラルアーツ教育支援:アカデミックアドヴァイジングからアカデミックプランニングへ」は2007年度「特色GP」に採択されています。また、大学院も2010年度に教学改革を実施し、従来の4研究科をアーツ・サイエンス研究科に統合しました。

時代の変化とともに、大学はその使命をあらためて問い直し、新たな取り組みを次々と実施しています。

御殿場会議(1949)
米国における募金運動

年譜

1949年 6月15日 御殿場会議 国際基督教大学創立
1952年 語学研修所開設
4月29日 献学式挙行
1953年 学校法人国際基督教大学設置認可
国際基督教大学教養学部(人文科学科、社会科学科、自然科学科(1969年から理学科に改称))献学
1954年 英語学科(1960年から語学科に改称)開設
1957年 大学院教育学研究科修士課程開設
1962年 教育学科開設 教育学専攻科開設
1963年 大学院行政学研究科修士課程開設
1964年 大学院教育学研究科博士課程開設
1968年 カリフォルニア大学との交換学生プログラムの確立(交換留学制度開始)
1974年 創立25周年記念式典挙行
1975年 創立25周年記念基金創設
1976年 大学院行政学研究科博士課程開設
大学院比較文化研究科博士課程開設
1978年 国際基督教大学高等学校開設
1984年 創立35周年記念式典挙行
1987年 大学院理学研究科修士課程開設
1991年 国際関係学科開設
1994年 本学後援組織Friends of ICUが発足
1995年 多摩アカデミックコンソーシアム(TAC)発足
1999年 創立50周年記念式典挙行
2002年 一万田記念「平和の鐘」設置
2008年 教養学部6学科制をアーツ・サイエンス学科に改組し、メジャー制を導入
2010年 大学院4研究科をアーツ・サイエンス研究科に統合

歴代学長

  • 湯浅八郎(1953年3月~1961年10月)
  • 鵜飼信成(1961年10月~1967年6月)
  • 久武雅夫(事務取扱)(1967年6月~1968年5月)
  • 久武雅夫(1968年5月~1969年10月)
  • 三宅彰(事務取扱)(1969年10月~1971年8月)
  • 篠遠喜人(1971年9月~1975年8月)
  • 中川秀恭(1975年9月~1983年8月)
  • 篠遠喜人(事務取扱)(1983年9月~1984年3月)
  • 渡辺保男(1984年4月~1992年1月)
  • 大口邦雄(学長代行)(1991年10月~1992年3月)
  • 大口邦雄(1992年4月~1996年3月)
  • 絹川正吉(1996年4月~2004年3月)
  • 鈴木典比古(2004年4月~2012年3月)
  • 日比谷潤子(2012年4月~2020年3月)
  • 岩切正一郎(2020年4月~)

キャンパスの桜並木 「マクリーン通り」

MacLean Avenue

キャンパス内には、大学の創立に貢献したジョン・マクリーン牧師 (ギンターパーク長老派教会、本学名誉人文学博士)の名にちなんだマクリーン通りという桜並木があります。この名づけの理由は、ICU献学前に遡ります。

ジョン・マクリーン牧師

1945年8月に広島と長崎に原爆が落とされ、ついに第2次世界大戦が終結しました。その直後、バージニア州の長老派教会の牧師であったジョン・マクリーン氏は、「汝の隣人を愛せよ」という説教を行い、その中で、日本への原爆投下を悔恨し、日本において平和を愛する人々を育てる大学をつくるために募金を開始しようと呼びかけを行いました。マクリーン氏は、昨日までの敵国であった日本に向けた募金活動を、「ナザレのイエスのような愚かな提案(Foolish Suggestion)」と呼びました。

この呼びかけに、北米教会連盟協議会がすぐに反応して募金活北米のキリスト教会連合がすぐに反応して募金活動が開始され、日本への憎しみは、勇気ある"和解"といううねりに飲み込まれていきました。同じころ日本でも、全国津々浦々の平和を希求する人々からの寄付が集まり、1950年にICUは三鷹に広大な土地を手に入れ、1953年に開学しました。その土地は、かつての軍需産業の一つ中島飛行機の三鷹研究所があった土地でした。

集められた募金と共に、マクリーン氏からは桜の苗木がICUに贈られました。それらの桜の苗木は、1952年に大学の正門から礼拝堂前のロータリーまで植樹されました。この、植樹には、ICU献学の1年前に開所したICU語学研修所に集まった第0期生達も参加しました。そして、桜が植樹された正門から礼拝堂前のロータリーまでは、マクリーン通りと名づけられました。この桜並木は、平和を願う人たちの和解のシンボルであり、募金という形での具体的な行動の証です。また、ICUの献学に際して集められた募金により素晴らしい学び舎をプレゼントされたICU生たちにとっては、感謝の心を思い出させてくれる幸せの通り道として今日まで大学のシンボルの一つとして、大切にされています。


一万田記念『平和の鐘』

ICUの創立に貢献のあった一万田尚登氏を記念して2002年9月11日に平和の鐘が設置されました。毎日始業時前と夕刻、水曜日の大学礼拝、日曜日の日曜礼拝の際に鳴らされています。鐘の表面には下記の言葉が刻まれています。

PEACE BELL LET THEM SEEK PEACE AND PURSUE IT FIRST PETER CHAPTER THREE VERSE ELEVEN DEDICATED TO THE MEMORY OF HISATO ICHIMADA ON THE OCCASION OF THE FIFTIETH ANNIVERSARY OF THE DEDICATION OF INTERNATIONAL CHRISTIAN UNIVERSITY SEPTEMBER TWO THOUSAND TWO

日本語訳: 「平和を求めて、これを追え」(ペテロ第一の手紙第三章第11 節) 国際基督教大学創立50周年に、一万田尚登氏を記念して奉献する。2002. 9